「ウルトラマン」より「マグマ大使」の方がテレビ放映開始は先だった!

 

テレビで怪獣が観れる!衝撃の「ウルトラQ」が放映開始されたのが、1966年1月でした。

今にして思うと人気爆発のテレビ番組でしたが、僅か半年で放映は終わり、続いて同じTBSのタケダアワーで放映されたのが「ウルトラマン」。

こちらも大人気になりましたが、「ウルトラQ」の放映終了の1日後の7月4日に、フジテレビでは「マグマ大使」の放映が開始され、「ウルトラマン」より放映は「マグマ大使」の方が先だったんです。

フジテレビは既に1960年に「怪獣マリンコング」という怪獣ものを放映しており、実はテレビで怪獣を最初に登場させたのはTBSの「ウルトラQ」ではなくフジテレビ。


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ですからフジテレビもTBSで人気番組になった「ウルトラQ」に思うところがあり、次回作の「ウルトラマン」に対しても、なんらかの情報がフジテレビ関係者に入っていた事でしょう。

ウルトラQ」には、怪獣と戦う地球人の味方の巨人の超人(宇宙人?)は出てこないし、それまでの映画でも出てこない。でも、どうやらTBSの次の番組はそんな超人ものらしいぞ?!

なんて話がフジテレビ側に伝わってきたとしても、おかしな話じゃない。

そして、「ウルトラマン」製作関係者も後にインタビューで、当時は産業スパイがいたから、「ウルトラマン」ではなく「レッドマン」というタイトルで企画していたと回想しています。

フジテレビがスパイをやってたかどうかは別にして、繰り返しますが怪獣をテレビで初めて登場させたのは「怪獣マリンコング」のフジテレビですから、先駆者としてのプライドもあったでしょう。

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マグマ大使」は巨匠!手塚治虫氏の原作漫画で、月刊「少年画報」に連載されていた人気作品。ここにフジテレビ関係者が目をつけたとしても、何もおかしい話じゃない。

原作もあり登場人物もはっきりしていて、更には既に「少年画報」で連載中でネームバリューもある「マグマ大使」。

どんな作品だかわからないけど、何やら超人と怪獣の対決物語らしいTBSの新番組に対抗するには「マグマ大使」がうってつけだったのは、なんとなく想像がつきますね。

また、フジテレビには「ウルトラマン」より先に「マグマ大使」を放映したい理由の伏線があり、それは「ウルトラQ」の裏番組だった手塚治虫氏の、こちも名作!漫画 「W3」が視聴率で負けたから。

そして「ウルトラマン」放映 に先駆けて、初の人間の味方の超人による特撮カラー放送の「マグマ大使」はフジテレビで放映開始。

 

オープニングテーマの最初から、「マグマ大使」は怪獣を見せてます。

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原作の「マグマ大使」は、怪獣がバンバン出てくるようなお話ではないのですが、なんたって「ウルトラQ」に対抗した特撮の実写ですから、原作とは異なり怪獣が毎回出る物語にテレビはなっています。 

又、特撮の実写とアニメを合わせていたのも、「マグマ大使」は秀逸で、これは初めての試みだったのではないでしょうか?(のちに「バンパイヤ」でもやってますが)。

勿論、「ウルトラマン」もスペシュウム光線など合成ですし、円谷プロも映画ゴジラ初登場からゴジラの口から出る熱線は合成でしたが、「マグマ大使」はアニメと実写の合成をもっとド派手にやってます。

で、「ウルトラマン」が東宝若手俳優を中心とした配役なのに対し、「マグマ大使」は日活の岡田真澄氏が主人公マモル(江木俊夫氏)のパパ。

マモルの江木俊夫氏も、「怪獣マリンコング」や「不思議な少年」の少し年上の太田博之氏ほどではなかったですが、既に有名な子役で、ママ役も元東映の八代万智子さん。

又、フランスで日本人とデンマーク人の間に生まれた岡田真澄氏、イギリスで英国籍の中国人と日本人の間に生まれたモル役の應蘭芳さん、リズ役のアメリカ人のイーデスハンソンさんと国際色も豊か。

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余談ですが、当時の八代万智子さんは26歳で、江木俊夫氏は13歳。親子設定には無理がありましたが(笑)、当時少年だった私は何の違和感も感じなかったですね。

しかし、おでこを出してるか出してないかの差で、後に東京12チャンネルの人気ドラマ「プレイガール」のレギュラーになる八代万智子さんは、あの妖艶さがなく清楚なママを演じてますから女優さんは凄い。

そして当時、三十路を出たばかりの岡田真澄氏のハンサム、美形ぶりは今更ながら驚きますし、イーデス・ハンソンさんも、とても美しいのでびっくりです。

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結果的に日曜7:00からTBSで「ウルトラマン」、月曜17:30(途中から17:00)からフジテレビで「マグマ大使」と、1966年夏から1967年にかけて、当時の少年は幸福な時間をテレビで過ごせたわけであります。

更に!東映も特撮ものに参入し、巨大な超人は出てきませんが、赤影・白影・青影の忍者が怪人や怪獣、果てはUFOとまで戦う時代劇、「仮面の忍者 赤影」が1967年4月からフジテレビで放映開始。

「仮面の忍者 赤影」も「マグマ大使」と同じで、週刊「少年サンデー」に連載されていた、横山光輝氏の忍者漫画「飛騨の赤影」が原作ですが、原作とテレビでは大違いの特撮・怪獣ものでした。
 
ところが!特撮・怪獣ものファンには有名な話ですが、毎週、着ぐるみの新しい怪獣を創作・登場させるのもミニチュアセットを作るのも大変な労力でお金もかかる現実に、スタッフは悩まされたとか。

でも、「マグマ大使」は「ウルトラマン」と異なり、登場する怪獣が毎週やられない。例えば当初のモグラみたいなモグネス、ラドンみたいなパドラ、音波怪獣レニックス等々、何話も登場しちゃう。

結局、共に視聴率好調でも「ウルトラマン」は9ヶ月弱で終わったのに対し、「マグマ大使」は約1年3ヶ月弱続いたのは、この怪獣の使い回しの差、アニメを使った差だったと私的には思っております。

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基本的に「ウルトラマン」は1話完結で、毎回物語が似たようで違うわけですが、「マグマ大使」は自称「宇宙の帝王」「地球の征服者」のゴアと、地球の創造主アース様が作ったロケット人間達の戦いです。

そのロケット人間が、マグマ大使でありマグマの妻のモルであり、マグマ夫妻の子のガムなのですが、物語の大筋は毎回、江木俊夫氏が演じたマモルとその両親である岡田真澄氏と八代万智子さんの物語。

マモルがピンチになると笛を吹いてロケット人間を呼び出しますが、マグマ大使のアクタースーツの問題なのかしら?(破れちゃう?)「ウルトラマン」のような怪獣との格闘シーンも、あまりありません。

子供心にマグマ大使のアクタースーツは、格闘OKの「ウルトラマン」のようには作られていない。マグマ大使は「ウルトラマン」と違い動きが緩慢で、おそらく跪く事もできないだろうと思いましたから。

マグマ大使の攻撃はほぼアニメを使ってますし、あとはロケット人間ですからロケットに変身し空を飛ぶシーンは使い回しが効きますから、「ウルトラマン」と違い製作費が抑えられたのではないかしら?

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 円谷プロは結局、「ウルトラマン」で一時撤退し、東映の「キャプテンウルトラ」がタケダアワーの後番組になりますが、こちらは全24話で終了。

なんと1967年9月24日の「キャプテンウルトラ」放映終了の翌25日に、「マグマ大使」も放映終了。「マグマ大使」はリアルタイム当時は「ウルトラマン」と「キャプテンウルトラ」に対抗していたんです。

そして「キャプテンウルトラ」のあと、再び!円谷プロの「ウルトラセブン」が放映開始され、 東映も負けじと「ウルトラセブン」放映開始の10日後に、NETで「ジャイアントロボ」の放映を開始しました。

ジャイアントロボ」は東映の要望により、大映映画の「大魔神」と「ウルトラマン」を合わせたようなヒーローを、「鉄人28号」「飛騨の赤影」の横山光輝氏に依頼して出来上がった物語でした。

また、「マグマ大使」「仮面の忍者 赤影」の成功に気をよくしていたと思われるフジテレビも、TBSの「ウルトラセブン」放映開始の翌10月2日、月曜19:30から「 怪獣王子」を放映開始。

当時の少年たちは同時期に「ウルトラセブン」「ジャイアントロボ」「怪獣王子」を観ていた幸せな時間を過ごした筈なのですが〜、私は「怪獣王子」だけ観てなかった。 

「怪獣王子」の裏番組、TBSで九重佑美子さんの「コメットさん」を観てたからです。