危険なパパ活:松本清張氏の「坂道の家」は面白い!

1991年のテレビドラマ、「坂道の家」での、次はどんな嘘をついてやろうとかでも思ってる風な鏡の前の化粧シーンの黒木瞳さん↑、良いですねー♪ しびれます。 

ちなみに「坂道の家」出演時のこの頃、黒木瞳さんもう「おねーちゃん」じゃなく、三十路越えてこの役やってたんですよねー。

20代半ばまで宝塚のトップスターで、映画・テレビデビューは遅かったから、しゃーないですけど、原作では黒木瞳さん演じる「りえ子」は22~23歳と、ちょっと年齢が異なります。

また、「りえ子」に惚れる親爺の寺島吉太郎は46歳の設定。46歳でもう晩年の描き方なのが、原作が発表された1959年という時代を感じます。


で、この1959年の松本清張氏の作品「坂道の家」は、何と!6回もドラマ化されており、1991年度版の黒木瞳さんが「りえ子」を演じた時の寺島吉太郎役、いかりや長介氏はもう還暦になる頃でした。

1959年では46歳は晩年でも、1991年では普通の企業の定年退職も55歳から60歳まで引き上げられ久しいので、46歳は晩年ではなく働き盛り。

還暦のいかりや長介氏の起用は、当然と言えば当然の時代の流れだったと思います。

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で、流石に私も1960年版、1962年版、1965年版は子供だったのでみてませんが、1983年度版と2014年版は、わりと近年YouTubeでみました(その後、削除されてますが)。

が、やっぱり原作に最も忠実なのは、1991年版、黒木瞳さんが「りえ子」を演じたやつかなーと思います。脚本の葉村彰子さんも、演出の久世光彦氏も良かったですし。

1983年版の、20代後半の坂口良子さんの「りえ子」も、少し原作より年が上ですが可愛くて素敵でしたけど、この「りえ子」はせつなくて良い人過ぎ。

石田純一氏演じた山口も、原作と違ってちょいと出過ぎで、「りえ子」という女の性悪さが恋人の山口の野心で霞んでしまってて、私的には、ちょっとこの「りえ子」は原作と違うなーと。

寺島吉太郎役の当時50歳近い長門裕之氏も、やっぱり年齢が少し上がってますが、長門裕之氏は原作の人生の晩年の悲壮感漂う寺島吉太郎ではなく、普通の助平親爺って感じで、これも違う。

2014年版も、尾野真千子さんの「りえ子」も美人で素敵でしたけど山口出てこないし(笑)、「りえ子」はホステスじゃないし、原作と物語が変わってました(それはそれで別物と思ってみれば良いけど)。

なので「これは『坂道の家』ではないし、『坂道の家』の「りえ子」ではない」という、実は隠れ「りえ子」ファンの私は、この作品は後はノーコメント(笑)。

女にモテないのもつまらないし、モテてる気になって舞い上がるのも後が怖い。男の人生はトンマだ(笑)

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原作を読んだ方ならわかると思いますが、原作の「りえ子」は黒木瞳さんが演じた「ああいう女」なんです。だから黒木瞳さんは、原作の「りえ子」に最も忠実な、とても良い演技をしていたと思ってます。

で、、、

「坂道の家」で私が思うのは、吉太郎がもっと狡い親爺だったら、案外みんな幸せだったんじゃないかな〜なんです。

昨今、キャバクラで何十万、何百万使っても、そのコは一回もやれせてくれないとお嘆きの殿方が多いのに(笑)、吉太郎は「りえ子」とやってましたから。

「りえ子」も吉太郎なんか最初から好きじゃなかったと、原作でも警察で最後に冷淡に証言してますが、ホステスとして「金使ってくれるいいお客さん」だから、繫ぎ止める為にやらせてたわけで、、、

吉太郎は垢抜けない無粋な野暮天なのに、こんな「やらせてくれる」若いホステスと出会え、実は!かーなりラッキーな親爺です(笑)。普通なら、やらずぼったくりですから。

だから、「りえ子」は金目当てでも「やらせてやってた」んですから、男にとって良い女の人の部類に入ると思います。

なので、「りえ子」に若い彼氏がいるのわかっても(そりゃーいるよな)と苦笑いができ、そして自分みたいな女房もいるしがねー親爺に、彼氏がいるのにやらせてくれるなんて「りえ子は優しいいい女だ」。

と思える、吉太郎が賢くて狡い親爺だったら、なんの問題もなかった。

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しかも、山口は恋人の「りえ子」が吉太郎とやってるのを知ってても、「りえ子」と2人で将来は店を持つのが夢だから、金になるから放置してるような奴なので、山口が逆上して吉太郎を襲う心配もない。

で、一番辛いのは吉太郎の器量は悪いけど「糟糠之妻」。銭使われていい面の皮で激怒します。

が、、、

吉太郎が「りえ子」に舞いあがって家を出なければ、「りえ子」は吉太郎の家に乗り込んで離婚を迫るような厄介な女ではなく、吉太郎に愛情など微塵も感じてない、金になるからやらせてやってただけの女。

だから!吉太郎が「糟糠之妻」に浮気を疑われても、「俺は浮気なんてしてない」「俺に女なんかいない」と嘘をつき続け、「俺が愛してるのは、おまえだけだ」と言える男だったら、何も起きなかった。

なので、やはり老いらくの恋、親爺の吉太郎の舞い上がり方は大人気ないし不味い!

男は小心だし嫉妬深いし、「りえ子」も仕事とは言え吉太郎に気のある素振りし、嘘つきまくりますから、純粋まっすぐ君親爺が舞い上がるのは無理はないとはいえ、その結果、本人含め皆が不幸になった。

だから、老いらくの恋は本当に男は舞い上がらないように注意ですね。

と、今更!自分に言い聞かす爺であった。