
近年は株の世界でも、時価総額の大きいテクノロジー企業7社を『Magnificent Seven』と称するように、映画『The Magnificent Seven』=邦題「荒野の七人」は、世界の共通語です。
で、「荒野の七人」の大元は1954年、日本の「七人の侍」なのは、あまりに有名。
まぁ〜上映時間は「荒野の七人」も娯楽映画としては長い方の2時間8分ですが、「七人の侍」は当時は前代未聞だったでしょう!3時間27分の超大作。
日本人の身贔屓でしょうが「七人の侍」は、古の日本の戦国時代、将軍になるも野武士、素浪人、落武者で百姓に殺害されるも紙一重の武士の世界、そして身分制度等々、「荒野の七人」より脚本が濃厚です。
例えば半人前の若武者浪人、勝四郎(木村功氏)と百姓の娘=志乃(津島恵子さん)の恋物語は、「荒野の七人」でも描かれてますが、こちらは「ならず者」のガンマンと百姓の娘。
なので、ラストでガンマンは百姓の娘と一緒になり村に残る選択をしますが(これが次作『続・荒野の七人』に話が繋がる)、「七人の侍」は身分が違うのでそういうハッピーエンドにはなってません。
半人前の若武者浪人といえど、百姓の娘と一緒になることはない武士と、惚れちゃったから一発やっちゃった志野を百姓親父はものすごく!怒るわけですが、こんな描写は「荒野の七人」にはない。
百姓出身の菊千代が百姓は狡くて小賢しいんだと、実は落武者狩りをした鎧兜等の戦利品を隠し持ってたことを他の侍達に暴露すると、侍達は複雑な表情になり百姓達への殺意を口にする。
落武者狩りから逃げた経験のある侍にしたら悪夢が蘇ったのだろうし、百姓村を襲う野武士達も群れをなしてないと百姓に襲われちゃう。
まさに負け戦の敗残兵、百姓達を守ろうと飯と宿だけで雇われた浪人達も、その百姓を襲う野武士達も、百姓による落武者狩りで命を落とす者も、皆、五十歩百歩。誰が変わってもおかしくない。
だから、そういう面倒臭いことを考えたくない、感じたくない方には、小難しいことは何もないコンパクトに「七人の侍」をまとめた「荒野の七人」の方が断然おすすめです。
侍とガンマンは違うと、黒澤明監督も言ってますね、、、
で、両方観た方ならお分かりの通り、ほぼ主演の活躍・存在感の三船敏郎演じた菊千代と、木村功氏演じる勝四郎を合わせた役所を、「荒野の七人」ではホルスト・ブッフホルツが演じています。
主演、中心人物の勘兵衛を演じた志村喬氏と並ぶ!三船敏郎氏が演じた菊千代と、上記の通り物語唯一の恋物語のこちらも重要な役所、木村功氏演じた勝四郎を併せ持ったキャラクターのチコ!
結果!「荒野の七人」は、「七人の侍」で稲葉義男氏が演じた五郎兵衛と加藤大介氏演じた七郎次を合わせたようなキャラのヴィンを演じたスティーヴ・マックイーンの大出世作になったわけですが〜、、、
脚本の段階ではチコとヴィン、そして「七人の侍」の勘兵衛に当たるクリスの3人が、ほぼ主演と言えたでしょうから、スティーヴ・マックイーン同様、ホルスト・ブッフホルツは大抜擢だったと言えます。
いや、日本人からしたら『世界の三船』、三船敏郎氏の菊千代に当たる役、チコを演じるわけですから、本来、ホルスト・ブッフホルツは相当!印象に残ってなければならない筈なのですが〜、、、
「荒野の七人」を語る時、ホルスト・ブッフホルツのチコを語る奴に会ったことがないし、私も語らない(笑)。
まぁ〜ホルスト・ブッフホルツは、1933年生まれのドイツの俳優さんで、「荒野の七人」の大抜擢によって、ハリウッド、そして世界の大スターに羽ばたく予定だったわけですが、そうは行かなかった。
実際にそうなったのは、1930年生まれでホルスト・ブッフホルツより3歳年上のスティーブ・マックイーンでした。
まぁ〜「七人の侍」の黒澤明監督も述懐されてますが、「荒野の七人」のユル・ブリンナー演じたクリスが南北戦争の敗残兵、南軍の元将校だったら、「荒野の七人」は相当キャラクターは変わったでしょう。
「七人の侍」は、菊千代以外の6人は浪人とは言え武士で、リーダーの勘兵衛は武芸の腕も確かだけど、どこかの将軍様に仕えていたであろう切れ者の軍師ですが、クリスはただの流れ者のガンマン。
もし、クリスが南軍の元将校だったら、スティーヴ・マックイーン演じたヴィンもそれに準ずる立派な軍人になる筈で、この元将校の片腕軍人役は彼には似合わなかったでしょう。
とはいえ、ヴィンのキャラクター云々より、「荒野の七人」のスティーヴ・マックイーンの馬の乗り方、馬上からのライフルの撃ち方、ピストルの撃ち方と身のこなしは、本当に!観客を魅了するそれ!
「大脱走」のヒルツしかり、スティーヴ・マックイーンこれにありでしたからね〜。ちょいとホルスト・ブッフホルツは勝てなかったですね〜。全て!スティーヴ・マックイーンに、持ってかれちゃいました。