「荒野の七人」初上映時は、オールスター映画ではなかった!

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ジョン・スタージェス監督の「大脱走」と共に、私の大好きな映画「荒野の七人」。

誰もがご承知の通り、1954年の日本の「七人の侍」を気に入ったハリウッドスター、ユル・ブリンナーが版権を買って作った1960年のアメリカ映画です(日本公開1961年)。
 
爺の私でも「荒野の七人」は、リバイバル上映された1970年代が初見で、当時はオールスター映画の触れ込みでしたが、後から知ったのですが公開当時、ハリウッドスターだったのはユル・ブリンナーだけ。

七人のガンマンの中では、あとハリー役のブラッド・デクスターが中堅俳優だったようですが、スティーヴ・マックイーンは「荒野の七人」のヴィン役で、一流ハリウッドスターの仲間入りを果たしています。

チャールズ・ブロンソンはそれまで端役ばかりで、ロバート・ヴォーンジェームズ・コバーンも当時は駆け出しの若手俳優。ドイツの国際スター候補のチコ役のホルスト・ブッフホルツも、世界的には無名。

ですからリアルタイム上映時は、オールスター映画ではなかった筈ですが、1961年の映画興行収益を調べてみると、洋画ではトップの8位!(1位から7位まで邦画)。

やはり邦画の「七人の侍」のリメイクという話題性と、作品の素晴らしさでヒットしたのでしょう。

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 ちなみに同年の映画興行収益のトップは、「七人の侍」と同じ黒澤明監督の「椿三十郎」で、4位に同じく黒澤明監督の「用心棒」がランクインされてる、正に!「世界の黒澤」全盛時代。

ところが!今や世界中で名作と誉の高い「荒野の七人」ですが、日本と違いアメリカの1960年の映画興行収益のトップ10に入ることはなく、興行的には成功とは言い難くわりと酷評されたそう。

「荒野の七人」は、それまでのジョン・ウェインに代表されるような古の西部劇とは確かに異なりますから、定番の西部劇を期待していた当時のアメリカ人には、なんとなく不評だったのでしょう。

また「荒野の七人」は舞台もメキシコですし、正義の保安官と悪者のガンマンの勧善懲悪でもなければ、移民やインディアン、そして騎兵隊のお話でもない。

考えてみれば「荒野の七人」というのは、元ネタが日本の「七人の侍」だけあって、相当それまでのアメリカ産の西部劇とは異なる映画だったと思いますね〜。

が、しかし「荒野の七人」は日本は勿論、欧州でもヒットし高評価を得られたので、アメリカ国内での評価も後から良好なものに変わっていったとか。

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また、こちらは「荒野の七人」と違い無断で黒澤明監督の「用心棒」をパクった、それでもマカロニウエスタンの金字塔!イタリア映画の「荒野の用心棒」が製作されたのは1964年。

やはり1960年で、今までの西部劇とはかなり違った「荒野の七人」は、ちょいと西部劇の本家、当時はジョン・ウエイン好きだっただろうアメリカ人には、受け入れずらかったのかもしれないですね。

とはいえ、アメリカの西部劇が激変するのは「荒野の七人」「荒野の用心棒」以降ですから、両作品の元ネタの黒澤明監督の影響力は、これからも歴史に残ると思います。

結局、後から西部劇の本国アメリカでは評価がついてきた「荒野の七人」は、7年後の1966年に「続・荒野の七人」が製作されました。

そして1969年には、クリス役がジョージ・ケネディに代わった「新・荒野の七人 馬上の決闘」、1972年にも、クリス役をリー・バン・クリーフが演じた「荒野の七人・真昼の決闘」と計4作も作られてます。

また2016年にも(日本公開2017年)、「荒野の七人」の新たなリメイク映画「マグニフィセント・セブン」が製作されているほど、「荒野の七人」はアメリカ映画史に残る名作と捉えられているようです。



さて「荒野の七人」は、そういうわけでユル・ブリンナーの映画なので、若きスティーヴ・マックイーンが予期せぬアドリブ演技で自分より目立とうとするのが、ユル・ブリンナーは気に入らなかったとか。

撮影時に二人が確執があったのは、わりと有名な話ですし、結果的にこの後「大脱走」の大ヒットで、スティーヴ・マックイーンユル・ブリンナー以上のハリウッドスターになった事もあるのでしょう。

「続・荒野の七人」で、クリス役はユル・ブリンナーの続投でしたが、ヴィン役はロバート・フラーに代わっており、スティーヴ・マックイーンは登場しません。

とはいえなんたって!「荒野の七人」ですから、エルマー・バーンスタインのあの!不朽の名曲は、全ての作品で使われているので、あの音楽が流れるとファンは痺れるようになっています。

最後になりますが、「荒野の七人」で名優!イーライ・ウォラック演じた悪役の親玉カルベラは、「七人の侍」では描かれていないキャラクターです。

黒澤明監督は悪い者たちの事情や心理分析には興味がないようようで、ただの悪者たちとして描いていますが、ジョン・スタージェスは盗人にも三分の理で、人間カルベラを描いてるのが2作の大きな差です。