何かとコロナで昨今話題のWHO。
そのWHOにゲリラがおし入って、銃撃戦の末割れたガラス容器は感染性の高い病原菌のもの。
1976年の映画「カサンドラ・クロス」は、その病原菌を浴び感染した逃げたゲリラ一人が、パリ・アムステルダム経由ストックホルム行きの大陸横断鉄道に乗り込んだから、さぁ〜大変てな物語。
「カサンドラクロス」は、日本では1977年の映画興行収入で6位。洋画だけなら「キングコング」「遠すぎた橋」に次いで3位の大ヒットで、今も有名な「ロッキー」より上でした。
でも、「カサンドラクロス」は、あまりアメリカでは興行収入は良くなかったよう。
その辺は、実はこの病原菌は国連決議を無視してアメリカ政府が秘密裏に培養していた代物。
アメリカはその細菌兵器の秘密が世界にもれるのを恐れ、列車共々ゲリラ一人と乗客全員を抹殺して「なかった事にしよう」とするアメリカ悪映画なので、きっとアメリカ人には不快だったのでしょう。
1976年は、アメリカ建国200周年だったのでアメリカ人は無茶苦茶!盛り上がってたでしょうから、そんなアメリカ悪の映画なんて観たくなかったのかもしれないですね。
で、そんな「カサンドラクロス」は西ドイツ・イタリア・イギリス・フランス、そしてアメリカの5ヵ国合作映画。
主演もイタリアのソフィア・ローレン、イングランドのリチャード・ハリスで、アメリカのバート・ランカスターは、乗客諸共に抹殺する命令を受け実行しようとする悪役でした。
だから、いまいち世界のヒーロー好きのアメリカ人に「カサンドラ・クロス」は好まれなかったのかもしれないですね〜。
「ゴッドファーザーPARTⅡ」のハイマン・ロス役で知名度も上がり顔も売れた、演技指導者、演出家で有名だったリー・ストラスバーグが出ていても、アメリカの興行収入はダメでした。
あと、アメリカからはマーティン・シーンも出てますが、まだ当時、マーティン・シーンはそんなに売れてなかったですからねー。
若い燕のマーティン・シーンと列車に乗った国際兵器製造業者の奥様、有閑マダム役のベテランアメリカ女優のエヴァ・ガードナーは、パニック映画の大ヒット作「大地震」に続く登場でした。
それでもアメリカの興行収入はダメでしたから、やはりアメリカ人はアメリカ悪の脚本が気に入らなかったのでしょう。
ちなみにマーティン・シーンて「カサンドラ・クロス」の数年前、テレビドラマ「刑事コロンボ 毒のある花」でも、「サイコ」でお馴染みのヴェラ・マイルズ演じる女社長の若い燕役やってました。
ですから、フランシス・F・コッポラ監督の「地獄の黙示録」でウイラード大尉を演じる前のマーティン・シーンは、そういう雰囲気のある役者だったのでしょう(可愛い顔してるし)。
又、この映画は本当にオールスターで、アリダ・ヴァリは「第三の男」で有名な女優で、「カサンドラ・クロス」後、イタリア映画の、こちらも日本でもヒットした「サスペリア」に出演しておりました。
ちなみに当時、日本でも森永のCMにも出演していて女性人気抜群だったイタリアのレイモンド・ラブロックが、新婚旅行で列車に乗ってる役で出ています。
だから、レイモンド・ラブロックの名前と顔も、少しは日本での興行収入増に一役買ってたかもですね。
「カサンドラ・クロス」も所謂グランド・ホテル形式と呼べるのかな?、当時のパニック映画は「大空港」も「タワーリング・インフェルノ」も、このグランド・ホテル形式が秀逸だから楽しめる映画。
超有名な「タイタニック」もしかりですが、そこに居合わせた人たちの人間模様、人生色々が上手く描かれてないと、この手の映画はいくらスリルとサスペンスと言っても面白みが半減しますからね。
最後になりますがリチャード・ハリスは、後にクリント・イーストウッドの「許されざる者」のイングリッシュ・ジョーをやった事もあり、な〜んかこの人の顔つきって、怪しい奴に見えちゃう(笑)。
でも、全然「カサンドラ・クロス」のリチャード・ハリス、怪しくない誠実で高潔な医者役でございます(笑)。
というわけで「カサンドラ・クロス」、スリルとサスペンスの快作!でございます。