ル・マン」の冒頭をあたらめて観返してみると、1970年公開の1969年の音楽フェスのドキュメント映画「ウッドストック」を彷彿させる、フランスのル・マンに集まる人々が描かれています。
勿論「栄光のル・マン」はドキュメントではない、ドキュメント仕立てのフィクションですが、それを楽しみに各地から集まる観客や、レース前のレーサーの姿がドキュメントの「ウッドストック」っぽい。
本物のル・マンの映像とフィクションを繋ぎ合わせたセミドキュメント映画なのですが、このレース場に集まってる観客は、本物なのかな?とても臨場感あふれる良い冒頭シーンと思います。
特にレーススタートの緊張感、直後の爆走するレースカーと排気音の臨場感は、当時映画館で観た時も今も家でPCで観ていても同じように鳥肌は立ちます。
前編に流れるフェラーリとポルシェのエンジン・サウンドは、レースファン、車マニアにはたまらないでしょうね〜。
ちなみにレーサー役、主演のスティーヴ・マックイーンは上映から36分過ぎまで、一言も台詞がない。やっと発したセリフもドライバー交代のコックピットで、次のレーサーに車の調子を耳打ちするだけ。
マックイーンに限らず「栄光のル・マン」は、人間の台詞が極端に少ない映画で、本当に全編に渡りフェラーリとポルシェのエンジン・サウンドが響き渡り、車が走り回ってる映画!
まぁ〜スティーヴ・マックイーンの意向と、当初監督予定だった名コンビ!ジョン・スタージェスとは合わなかったようで、残念ながらスタージェスは監督を降板しております。
が、リー・H・カッツィン監督が撮影したカーレース主体の映像は、マックイーンは気に入ってたと思います。それこそレースカーとレーサーとコックピットのメカニックを黙々と描いてる映画ですから。
音楽もギャラは高かったであろう、巨匠!ミッシェル・ルグランなれど、基本、全編!レースングカーの爆音が鳴り響いてる映画なので、もっとギャラの安い無名の方でも良かったのではないかしら?
まぁ〜テーマソングは必要ですから、この辺はしょうがないですが。
ただ、結果的に多くの日本人にル・マン24時間耐久レースを知らしめた歴史的映画になった「栄光のル・マン」ですが、日本ではそれなりにヒットしましたが、本国アメリカでは興行的に大惨敗だったとか。
レースはフランスで行われる、ドイツのポルシェ対イタリアのフェラーリの戦いだし、1968年に車両規定が大きく変わりアメリカのワークス・フォードはル・マンから既に撤退していた。
当時は今よりも、なんでも世界一好きだったアメリカ人が、アメリカのメーカーの出ないレースに興味を示すとは思えないし、今にして思うとなんとなく「栄光のル・マン」アメリカ人向きじゃない気がします。
まぁ〜ジョン・スタージェスが、爽快なレースシーンに壮大なラブロマンスを描けばヒット間違いないと思っていたように、アメリカで大ヒットするのは戦争映画でもなんでも、この壮大なラブロマンスもの。
でも、マックイーンは自らの強い意志でそれを全て排除し、前出の通りレースカーとレーサー、そしてコックピットのメカニックたちを刻々と追う、セミドキュメンタリーに「栄光のル・マン」をした。
だからアメリカでウケるわけがなかったのですが、「栄光のル・マン」のそのクールで硬派なセミドキュメンタリーに拍手を送り興行収益をそれなりに上げられた日本、日本人たちは私は凄いと思います。
だって今観ても「栄光のル・マン」は、カーレース映画の金字塔だと思うから。
そんな硬派なレースカーが主役の映画「栄光のル・マン」なれど、そこは綺麗どころ好きとしては注目したいのが、昨年のル・マン耐久レースで事故死したレーサーの未亡人、リサ役のエルガ・アンデルセン!
リアルタイム、映画館で観た中坊の時から(綺麗な人だな〜)と思ってましたが、爺になって観てもやっぱり美しい!1935年2月生まれだから、撮影当時は35歳かな?今で言う美熟女だけど、しかし美人だ。
まぁ〜品格ある端正な顔立ちのエルガ・アンデルセンですが、アドルフ・ヒトラーが自殺しドイツが第二次世界大戦で敗戦した時は10歳。パパは敗戦2週間前に国防軍に招集され行方不明になったとか。
敗戦後の大混乱のドイツを、少女だったエルガ・アンデルセンはママと生きたのですから、色々と大変だった事でしょうね。
結果的には持って生まれた美貌と、後から学習した英仏の語学のおかげで、フランスに単身で渡ってもエルガ・アンデルセンは生きてこられたのでしょう。