映画「荒野の七人」のポスターの不思議について


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ジョン・スタージェス監督の「荒野の七人」は、1960年に公開された(日本公開1961年)アメリカ映画。

1954年作の日本の黒澤明監督の「七人の侍」が、アメリカ公開されたのが1956年。プロデュサーのルー・モーハイムがすぐに東宝からリメイク権を安価で買い、それをユル・ブリンナーがまた買い取ってます。

当初はユル・ブリンナーが監督をつとめようとしたぐらい、彼は「七人の侍」に入れ込んでいたわけですから、勿論!主役はユル・ブリンナー。「七人の侍」の志村亮氏が演じたリーダーの官兵衛役に当たります。

 



当然「荒野の七人」のオープニングで、最初に名前がピンで登場する役者はユル・ブリンナーで、2番目に登場するのが悪役カルベラを演じたイーライ・ウォラック

そしてスティーヴ・マックイーンが3番目にピンで登場と、「荒野の七人」は、このお三方が主演である事を示しています。

そして『The Magnificent Seven』のタイトルが出て、チャールズ・ブロンソンロバート・ヴォーン、ブラッド・デクスターとジェームズ・コバーンが連名で登場し終わると、後はwithで大勢の出演者の明記。

さて7人のガンマンの後一人、チコ役のドイツ人俳優ホルスト・ブッフホルツの名前がないなーと思っていると、ピンで出演者の最後に名前が登場します。

これ邦画でもよくある、物語の重要な役所の大物俳優や売り出し中俳優が、最後にピンで名前が登場するのと同じで、前出のお三方と、このホルスト・ブッフホルツが「荒野の七人」は主演扱いなわけです。

当時のホルスト・ブッフホルツは「ドイツのジェームス・ディーン」と呼ばれ、ハリウッドにやってきた注目の俳優だったそうですから。

 
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で、前置きが長くなりましたが、古の映画ファンにはお馴染みのこの↑「荒野の七人」のポスター(プログラム表紙も同じだった)。

でも、ネット上で『The Magnificent Seven』で検索しても、このデザインのものは諸外国で見つかりませんので、おそらく日本オリジナルと思われます。

また1970年代のリヴァイバル上映時は、当時、日本の男性化粧品『マンダム』のCMで大人気だったチャールズ・ブロンソンを真似、ご丁寧に髭を書き加えた同じポスターが使われました(笑)。

でも、2024年現在、「荒野の七人」最後の劇場リバイバル上映になった新宿ミラノ座隣の映画館(名前失念)で私が買ったプログラムの表紙は、このポスターのものは使われてなかった。

また、現在発売されている「荒野の七人」のDVDのジャケットにも、このポスターのものは使われておりません。



『The Magnificent Seven』で検索すると、諸外国もので最も見つけられるのが、↓こちらのデザインで、これはフランスからの輸入DVDです。


繰り返しますが「荒野の七人」はユル・ブリンナー主演映画で、イーライ・ウォラックスティーヴ・マックイーン、そしてホルスト・ブッフホルツの4人が主演扱いの映画。

でも、この日本製ポスターのユル・ブリンナー
ホルスト・ブッフホルツ、極端にとても小さくないかしら?

当時の日本の配給会社は、アメリカ製のオリジナルポスターが気に入らなかったのかしら?
 
このポスターを見る限り、「荒野の七人」の主役はスティーヴ・マックイーンで、ユル・ブリンナーホルスト・ブッフホルツの扱いは、あまりに不当だ(笑)。

まぁ〜「王様と私」の大ヒットがあったとは言え、ユル・ブリンナーが日本で人気の高かった俳優という印象はないし、それまで西部劇といえば日本人でもジョン・ウェインゲーリー・クーパー

今となれば、その斬新さは霞んでしまいましたが、「荒野の七人」はそれまでの西部劇とは明らかに違う映画で、7人のガンマン達は皆「訳あり」の今で言う陰キャラ。

ジョン・ウェインゲーリー・クーパーとはかなり違いますし、そもそも「荒野の七人」の舞台はスペインの農村。アメリカ西部で正義のタフマンが、ならず者、悪漢と対決する物語じゃない。

そのうえ、ユル・ブリンナーはそれほど日本で人気がない。さりとてスティーヴ・マックイーンとて、代表作になるような映画にはまだ出てなかった(荒野の七人がそれになった)。




でも!歴史を紐解くと、日本で「荒野の七人」が上映されたのは1961年で、この時!日本でもスティーヴ・マックイーン主演のテレビドラマ「拳銃無宿」が放映され、人気だったのがわかります。

東京オリンピック開催3年前の当時の日本で、テレビは高額な代物。輸入してくるアメリカ産のドラマは、今では信じられないほど、当時の日本で並み高視聴率の人気商品でした。

当時日本で大人気だった「ララミー牧場」は最高視聴率43,7%。ジェスを演じたロバート・フラーは日本でもの凄い人気で、来日時はそれはそれは国中が大騒ぎだったとか。

同じく最高視聴率43,4%の「ローハイド」出演者御一行様来日時も、同じく大騒ぎだったようで、当時ロディを演じたクリント・イーストウッドは、まだ映画界では代表作のなかった若手俳優
 
で、「ララミー牧場」「ローハイド」ほどではなかったにしろ「拳銃無宿」のスティーヴ・マックイーンも、日本ではテレビでお馴染みだった、このパターンでしょう。
 


更にそこまで視聴率は取れなかったようですが、チャールズ・ブロンソンも映画で有名になる前に、テレビドラマの、こちらは現代劇の「カメラマン・コバック」で主演しており、この放映が日本では1960年。

「荒野の七人」日本オリジナルと思われるポスターの、真ん中のスティーヴ・マックイーンの横は、そのチャールズ・ブロンソンです。
 
5人の顔の上の二人。銃を構えるはマックイーンで、ライフルを構えてるのもブロンソン

「荒野の七人」は後にオールスター映画的になりましたが、初上映時7人のガンマンでハリウッドスターだったのはユル・ブリンナーだけ。だから欧米のポスターは日本のものとは異なるのでしょう。

日本はテレビが偉かった時代で、ハリウッドスターのユル・ブリンナーより、テレビスターだったスティーヴ・マックイーン、そしてチャールズ・ブロンソンを目立たせた方が興行になる!

と、配給会社や広告代理店は思ったんじゃないでしょうかね〜?

そう考えると、この日本独自の謎の「荒野の七人」のポスターの俳優の配置は納得がいく。