バブル真っ盛りの1986年上映「エンゼル・ハート」は、そんな日本の空気に合わなかったのか?ヒットしなかったね、、、

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その崩壊後に「バブル」と命名された日本のそのバブル突入の1986年、「ナインハーフ」で女性人気爆発中だったミッキー・ロークと、名優ロバート・デニーロの共演で話題だった映画「エンゼル・ハート」。

ただこの映画、同年の「バック・トゥ・ザ・フューチャー」や「ロッキー4 炎の友情」、そして「グーニーズ」「コブラ」 「エイリアン2」のように、日本で大ヒットとまではいきませんでした。

今もわりとリアルタイムを知らない若い層でも知っているであろう、これらの作品に比べると「エンゼルハート」は認知度の低い、ちょいとカルト的な映画と言えるでしょう(2大スターの共演だったのに)。

監督・脚本のアラン・パーカーは2020年に他界されましたが、2021年現在60代前半から50代後半の女性には、自分の娘時代が走馬灯のように蘇るであろう、日本独自の大ヒット映画「小さな恋のメロディ」の脚本を書いた人。

でも、こちらの「エンゼルハート」は、「小さな恋のメロディ」のようなメルヘンでもポエムでもない、とても!おどろおどろしい話し。 

原作はその凄惨な内容から「悪魔のバイブル」とも呼ばれ、アメリカでは廃刊運動まで起こった曰く付きの代物でしたが、仏教徒の多い日本人には実はあまりピンとこない悪魔もの。

しかも時代は、後にバブルと命名された浮かれ気分の日本の空気に、「エンゼル・ハート」はあわなかったので、大ヒットしなかったのだろうと私は思ってます。

「愛の嵐」のイギリス人女優シャーロット・ランプリングもでてた!

エンゼル・ハート」にはもう一人、「愛の嵐」のイギリス人女優シャーロット・ランプリングも出演しており、俳優だけなら金になりそうな映画だったのですが、繰り返しますが日本ではそれほど大ヒットしなかったです。

が、しかし!、、、

私的にはかなり好きな映画。ラストのどんでん返しは当時、(お〜っ!そうきたか)と、ぶったまげましたから。

ちょいとネタバレになりますが、「エンゼル・ハート」は古い映画なので軽く物語を紹介します。

主演の私立探偵の名がハリー・エンゼルで、演じてるのがミッキー・ローク

そのハリーが、謎めいた紳士ルイ・サイファー(ロバート・デ・ニーロ)に、第二次世界大戦以前に人気のあった歌手のジョニー探しを依頼されるところから物語は始まります。

そしてハリーがジョニーの手がかりを掴むと、その人達は次々と殺害されてしまう。どうやらジョニーは悪魔崇拝のカルトに関わっていたようだという淡々とした流れですが、とてもひきこまれます!


しかしジョニーは一体どこにいるのか?、何故?次から次へとハリーが辿りついたジョニーの知人や愛人は殺害されてしまうのか?、このままでは、自分が連続殺人の容疑者にされてしまうと焦り慄くハリー。

そしてやっと連続殺人の黒幕であろうという人物に、ハリーがたどり着いたと観ている者が思ったら、ラスト10分の衝撃の!、そして非常に胸の悪くなる「どんでん返し」。

悪魔に詳しくない私でもよく聞く話ですが、悪魔は自分の手で悪事は行わない。人間をそそのかして悪事をさせる通り、このラスト10分は誠に嫌〜なシーンです。

そして更に「悪魔はそこまでやるの?!」ってな、もう一つダメ押しの、悲しくおぞましいバッドエンドが待っていた、、、。

と、なかなかの!スリルとサスペンスの「エンゼル・ハート」は秀作で、私的に古今東西歴代傑作映画を30本選べと言われたら確実に入る作品です。

まぁ〜観てない方で、「エンゼル・ハート」から10年、日本公開は1996年だった「セブン」あたりが好きなバッドエンドファンの方なら、おすすめ映画です。 

1955年のニューオリンズが舞台な、音楽的にも面白い映画!

最後になりますが、舞台は1955年のアメリカ、ニューヨークとニューオリンズです。

原作はニューヨークだけだそうですが、R&Rムーブメントのルーツになった1955年のニューオリンズはジャズやブルースに溢れ、とても物語に合っている街。

勿論、それは「アメリカン・グラフィティ」的な白人の「古き良きアメリカ」ではない、もっと寂れた黒人ばかりの街のニューオリンズ。このへんの演出はアラン・パーカーの素晴らしいアイデア

アラン・パーカーは同じイギリス人の、ブルースをルーツに持つプログレバンド、ピンク・フロイドの映画「ピンク・フロイド ザ・ウォール」も手がけているので、このへんのアメリカ黒人音楽のルーツに、精通している方なのでしょう。

ニューオリンズの黒人達が、かのエルヴィス・プレスリーも影響を受けたそうな教会をライブハウスのように歌い演奏し合唱するゴスペルやブルースのルーツのシーン。

デキシーランドジャズスタイルのストリートミュージシャンの演奏に合わせ、タップを踊る黒人少年等々のシーンのR&B、ブルース音楽の使い方、とても素晴らしい!

音楽を担当したのは、イギリスを拠点に活動してる南アフリカ出身の音楽家トレヴァー・ジョーンズ

この方は「エンゼル・ハート」の3年後、こちらも私的には傑作と思っております、アル・パチーノのサスペンスもの「シー・オブ・ラブ」でも音楽担当し、2005年の日本映画「亡国のイージス」の手掛けてます。


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更には「エンゼル・ハート」には本物の伝説のブルースシンガー、ブラウニー・マギーがクラブでバックバンドを従え歌うシンガー&ギタリスト役で登場しており(しかも殺害される重要な役所です)、相当!音楽的にも凝った映画。

とはいえ、日本は歌謡曲大国なので(フォークやニューミュージック、Jポップ含め)、この辺のアメリカの黒人音楽のルーツに興味ある人って、日本では限られているので、こういう描写は興行成績に繋がらない。

特に1986年当時の日本は、ユーロビートに日本語を乗せて大儲けした松浦勝人氏のエイベックスもまだ創業されておらず、宇多田ヒカルさんの大ヒット後、日本で「和製R&B」ブームが起きるのは、もっと後。

だから、その名の通り欧州圏のユーロビートの元になった、アメリカのファンクやR&B、そしてブルースなど、当時の日本では一般には知られていなかった、かなりマニアックでコアな音楽でしたから。
 
そしてもう一人の「エンゼル・ハート」の注目の女優、17歳の子持ちの黒人少女という重要な役所を演じたリサ・ボネットは、この映画の翌1987年、19歳でミュージシャンのレイニー・クラヴィッツと結婚しています。

その後、リサ・ボネットは離婚再婚してますが、レイニー・クラヴィッツとの子、ゾーイ・クラヴィッツは女優・モデル・歌手をやってます。