2017年の邦画「愚行録」。胸の悪くなる映画でしたが面白かった〜!

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「人間て嫌だよね」物語が好きなので、タイトルからしてそれっぽい映画みたいなので、前知識ゼロで2017年の邦画「愚行録」を観てみました。

妻夫木聡氏演じる週刊誌の記者が、娘を幼児虐待、育児放棄した罪で収監され、精神鑑定を受けている妹の面会に行くところから物語は始まります。

で、話は急に変わって、記者は1年経過するも未解決の一家惨殺事件を追わせてくれと上司に頼み、理想的な夫婦・家族と伝わる殺害された夫妻の、同僚や友人・知人からの聞き取り調査を開始。

映画は淡々とドキュメンタリータッチで静かに進み、どうもこの殺害された夫妻、二人ともそんなに素敵な人ではない、いや、嫌な奴だったと観る者に徐々に感じさせていく「愚行録」は会話劇です。

そんな映像を撮影しているカメラマンは、日本人ではなくポーランド人のピオトル・ニエミイスキ。

石川慶監督は、巨匠!ロマン・ポランスキーらを輩出したポーランド国立映画大学で学んでいるので、その関係で呼んだのかしら?

まぁ〜殺害された夫婦に限らず、登場人物みんなロクなもんじゃない、みんな嫌〜な奴なのが良いですね〜(笑)。偽善的な「いい人」が一人も出てこないのが素晴らしい!

少しでも親子の絆とか友情とか、そういう嘘くさいお笑いヒューマニズムを出されると、私は一気にしらけるので、みんなロクなもんじゃない、嫌〜な奴等の話の「愚行録」は私のツボ!

 

 


 
愚かな人達の中に善人がいる、善人たちの中に愚かな人がいるのではなく、「人間とは愚かなもの」。立川談志家元曰く「落語とは人間の業の肯定である」。


「愚行録」の登場人物は、皆、個々の幸せと快感と快楽を求めてる普通の人たち。いや、普通よりも上と一般には思われる学生、社会人ですが、みんなロクなもんじゃない。

何故なら、真面目に幸せと快感と快楽を求めるそれは、ほぼエゴイズムで、その結果が全て「愚行」になってるのが良いです。その度合いが人により異なるだけで、人間て概ねそんなもんですから。

そして「愚行録」は、サスペンスとしてとても深い!

冒頭の物語と何の関係もなさそうな記者の妹が、後半になって「ほ〜っ、なるほど〜!」と繋がるこの流れ、本当に素晴らしい!お見事!大絶賛しちゃいます。

結局、凄惨な殺人事件物語なんです。 そして新たな殺人も起きるんです。でも、その犯人を観てる者はわかっているのですが、ネタバレになりますが捕まらない。

「愚行録」は、完全犯罪物語です。

いつも思いますが、映画もドラマもやはり原作、脚本ですね〜。役者は皆さんお上手だから。

で、殺害された友希恵と共に「愚行録」のキモである記者の妹役を演じた満島ひかりさん。

素晴らしかったし、何本か出演作品観てますが、本当に年は取りたくないもので、wikipedia.で調べないとすぐ頭に作品名が出てこない(汗)。


そうだそうだ、満島ひかりさんは、2010年のこちらも妻夫木聡氏との共演「悪人」で、「愚行録」の友希恵みたいな上昇志向の強い嫌な女を演じ、死体になってた子でした(笑)。

そしてもう一人の物語のキモ、殺害された友希恵を演じた松本若菜さん。

美人で愛想もよく親切で上品で良い人っぽいけど、真正お嬢様ではないコンプレックスと内に秘めた上昇志向の強い嫌〜な女役って、如何に女性は誰もがそういう素養があるとはいえ、難しかったと思います。

松本若菜さんも、満島ひかりさん同様とても良かったな〜。

で、、、

 原作の貫井徳郎氏の小説は読んだ事ありませんが、私の好きなタイプの思考の方かもしれない。

渋谷区生まれで当時の第二学区の名門進学校、都立青山高卒で早稲田大の、バリバリのシティボーイで秀才なのに、こんな陰惨な物語が思い浮かぶなんて、きっと良い人なんだろうな〜と思います(笑)。

監督の石川慶氏も長編を手がけるのは、こちらの「愚行録」が初めてという事ですが、ヨコハマ映画祭で新人賞を獲得してますね(納得の結果と思います)。

思えばこのヨコハマ映画祭、1979年の第一回の監督新人賞は、私も10代の頃は何かとお世話になった柳町光男氏で、作品は私の新宿の同級生で悪友だった本間が主演した「19歳の地図」。

本間も第一回の新人賞を、熊谷美由紀さんとともに受賞してました。爺にはつい昨日の事のように覚えてますが、思えば随分と時間が経ったものだと痛感する次第。

というわけで映画「愚行録」、とても!胸の悪くなる映画ですが、傑作でした♪