松本清張氏の「ゼロの焦点」は、米国占領が終わった2年後に発表された問題作!

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1959年に文庫化された、松本清張氏の「ゼロの焦点」。1961年と2009年に映画化され、6回ドラマ化されてる、日本人の大好きな物語です。 


物語は大東亜戦争敗北後、日本を占領統治にやってきたアメリカのGHQ相手に春を売って金を稼いでいた過去ある女性と、新婚女性のお話。

同じく松本清張氏の「砂の器」でも、敗戦後のどさくさ紛れに戸籍の改ざんが行われていますが、まぁ〜敗戦後のどさくさは、色々あったのでしょう。

現在は二代目の日本に帰下した息子さんが社長やってる、パチンコ大手の「マルハン」創業者の韓昌祐氏は、敗戦直後に韓国から日本に密航船で密入国してるぐらいですから。

そして、日本で売春防止法が制定されたのは1956年であり、それまで売春は合法。ちなみに韓国で性売買特別法が制定されたのは2004年と2000年代。それまで韓国は売春は合法でした。

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というわけで売春が合法だった敗戦後の日本で、日本人女性の貞操を守るためという大義で政府が募集したのが、アメリカ兵相手の「特殊慰安施設」で働く売春婦。

それでも、アメリカ兵の日本人女性への強姦事件は頻繁にあったそうですが、アメリカ占領下だったのでアメリカ兵の強姦事件は表には出なかった、かなり嫌〜な時代。 

ゼロの焦点」の舞台は、そんな敗戦後のどさくさがちょっとは収まった、1952年にサンフランシスコ講和条約が締結され、まがりなりにも日本が再独立してアメリカの占領下が終わった6年後の話。

広告代理店勤務の鵜原憲一と見合い結婚した26歳の板根禎子は、新婚旅行も終え新生活に入った数日後、夫の鵜原憲一は仕事の引き継ぎのために金沢に行き、そのまま行方をくらませてしまうという序章。

松本清張氏の作品は、序章からわくわくさせられるものが本当に多いですね〜♪天才です!

当然、新婚数日とはいえ板根(鵜原)禎子は、鵜原憲一の妻ですから警察や鵜原憲一の親族と共に、鵜原憲一の行方を探し出すわけですが、結果として連続殺人事件が起きちゃう「ゼロの焦点」。

この物語のミソは、鵜原憲一が以前「特殊慰安施設」のある立川で警官をやっていて、警官時代に顔見知りだったアメリカ兵相手の売春婦だった佐知子と、金沢で会ってしまう所。

過去を隠し、地元の名士の後妻におさまっていた佐知子にとって、絶対に会いたくない相手だったのが鵜原憲一。

ちなみにかつて日本だった某国では、自分は慰安婦だったと名乗りでた女性達がいて、日本の朝日新聞がこれに乗っかり反日を盛り上げ発行部数を伸ばしました。

 

また、弁護士の福島瑞穂先生もこれに乗って国会議員になりましたが、日本人で自分は春を売っていたと名乗りでた女性って聞いた事ないですね〜。

同じく敗戦国だったドイツ、そして東欧ではやって来たソ連兵に敗戦後、強姦された女性達は相当数いたと伝わっていますし、満州の日本人女性達もソ連兵に強姦されたそうですが、名乗り出たって人は聞いた事ないですね〜。

映画化もされた「ベルリン終戦日記 ある女性の記録」で、当時のソ連兵の強姦の凄まじさが書かれていますが、著者は匿名を貫いています。

例えば、日本は1956年まで売春は合法でしたし、その後も特殊浴場内の男女の「自由恋愛」ということで、トルコ風呂=ソープランドで春が売られてるのは誰でも知ってるわけです。

が、自分の祖母やママや奥方が、戦時下で慰安婦だった、敗戦後はアメリカ兵相手の売春婦だった、トルコ嬢ソープ嬢だったと、堂々と公言してる人を見た事がない。

勿論、当事者の女性が名乗り出たという話も、聞いた事がないです(このへんは某国との国民性の違い?)。

胸を張って堂々と名乗れる商売でもないと、本人もその家族も思っているでしょうし、祖母・母・妻の過去を暴いて楽しい家族もいないでしょうから、隠蔽してるでしょう。

昨今のAV女優は、いつまでもネット上に画像と映像が残るので、隠し続けるのは難しくなりましたけど、昔は写真も殆ど残ってないですからねー。

というわけで「ゼロの焦点」は、大東亜戦争敗北後の闇を描いてる物語で、私的には大好きな松本清張氏の作品の中でも、5本の指に入る名作と思っております。


・若い板根禎子が見合い結婚とはいえ、あまりに鵜原憲一の事を何も知らないで結婚している、見合い結婚が圧倒的に多かった頃の時代背景。

・作品発表の頃は、ついこないまで公然とアメリカ兵相手の売春が、国をあげて行われていた時代背景。

アメリカ兵相手の、所謂「パンパン」「オンリーさん」の売春婦達の、忌まわしい過去を「なかったことにして」生きるその後の強かな人生。

・敗戦国のうえ売春が合法だった時代なのに、日本人は男女とも、女性の過去の汚点とされるそれに眉をひそめる国民性(今もかな?)。


こんなところが、私は「ゼロの焦点」が面白いと感じる要因です。

ゼロの焦点」が最初に映画化されたのが1961年と、文庫化されて2年後ですから、さぞや!当時は売れた話題作だったのでしょう。

監督は野村芳太郎氏で、松本清張氏作品は1958年の「張込み」に続いての監督作品。

 

で、1970年代に入ってからは「影の車」「砂の器」「鬼畜」、1980年代も「悪いやつら」「疑惑」と松本清張氏作品の傑作映画を撮ってました。

更に!原作があるとはいえど、脚本が黒澤明氏監督作品でお馴染みの!橋本忍氏と、若き山田洋次氏。

 

橋本忍氏は前出の「張込み」「影の車」「砂の器」で野村芳太郎氏と一緒に仕事をしており、山田洋次氏の松本清張氏原作映画「霧の旗」でその後も仕事をしています。

まぁ〜板根(鵜原)禎子役が久我美子さんで、佐和子役が高千穂ひずるさん。流石に時代を感じます。今の若い人は二人とも知らないでしょうね〜。

最新の2009年版は板根(鵜原)禎子役が広末涼子さんで、佐和子役が中谷美紀さんでした。