「流されて…」。日本公開1978年のイタリア映画の傑作!を、若い頃にテレビとレンタルビデオで観て以来、爺になって久々に観みたけど、やっぱり名作だ!

1974年製作なれど、日本公開は大幅に遅れた1978年のイタリア映画「流されて…」。まぁ〜このパターンは、日本で有名なスターが出てるわけじゃない欧州映画にありがち。

それだけ欧米で話題になって、そして興行成績も良いことを聞きつけ、日本の配給会社が遅ればせながら上映に踏み切ってるので、傑作が多い!

私はテレビの洋画劇場で観ましたが、やっぱり男と女のエロスは、イタリア映画、フランス映画だなーと思ったほど、当時若者だった私は、お気に入りの映画でした。

レンタルでもう一度観てますが、この度GYAO!で公開されていたので、爺になって久々に観てみました。

まぁ〜しかし、冒頭から7分ぐらい、海やヨットで激しく言い争いをする、共産主義者の学者の夫と金満資本主義の奥さんの、イデオロギーの違いの罵倒合戦は凄い(笑)。

如何に共産国の当時の親分、ソ連スターリン時代が酷かったかを奥さんが言うと、原爆投下された「広島」の名前も出し、共産主義者はあんなことまではしないという夫。

ここ日本人として、とても気になる考えさせられる台詞なので、平和ボケ日本人は注目です! 

時代背景は、東西冷戦下の西側で最大の勢力を誇っていたイタリア共産党が、強かった頃のイタリア!

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その後も、この奥さん、如何に!高慢ちきで不愉快で嫌な女か、これでもか!と描かれます(笑)。

しかしこの奥さんを演じた マリアンジェラ・メラート、イタリア人女優ってことで、あんまり日本では馴染みがない。

私も「流されて…」とその姉妹編の続編(こっちはイマイチだった)しか、マリアンジェラ・メラートの出演作、観てないですが、 「流されて…」の彼女は最高ですね♪

マリアンジェラ・メラートは、けっして美人ではない。いや、一歩間違えると「面白い顔」の部類だと思いますが、この映画での マリアンジェラ・メラートはとても良い!

物語は、遅く起きたこの奥さん、皆がとっくに出かけて海上のヨットに誰もいない。


そこで「私も泳ぎたい」と駄々をこね、この奥さんの事が大嫌いな!ヨットの乗組員の男と二人でゴムボートに乗って出かけたら、あらら!、なんと途中でエンスト!

物語は、ここから佳境に入ります!

修理しようとしてもエンジンは止まったまま、何もしない奥さんは嫌味と文句百万だれだけど、問題は何も解決しない。一面の海に止まったゴムボートに男女が二人。

一度エンジンがかかりますが、四方八方が海で陸も見えないので、どこに向かって良いかもわからない。で、やっと島を見つけたら、なんと!無人島。

立場の逆転の発想は、当時のヒット映画シリーズ「猿の惑星」の影響のような気がするな〜

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このへん、日本映画・東宝特撮映画の最高峰!「マタンゴ」同様、無人島で金なんて役に立たない。サバイバー じゃないと生きていけない。

でも、まぁ〜無人島モノは色々ありますけど、どの映画も映画ですからねー。

サバイバルが普通に甘いわけで(笑)、「流されて…」もすぐに水を見つけて、住まいも見つけて、海の幸もとれて、害虫も爬虫類も危険な動物も出てこない、けっこうな「南の楽園」(笑)。

無人島じゃないのに、最後の日本兵の二人、グアム島の横井さんやルバング島の小野田さんの話を聞くと、野宿生活の過酷さを痛感しますから、ここは無人島でも「南の楽園」。

でも、サバイバル映画じゃないから、このへんは良しと(笑)。

で、ブルジュワで高慢ちきな奥さん、全く!サバイバル力がないので、男に頼るしかない。

勿論、最初は上から目線で下僕の男に命令するわけですが、男も無人島でいつ助けが来るかもわからないから、そんな生意気で高慢ちきな奥さんの指図など受けなくなる。

それどころか、逆に命令して奥さんを下僕にする、立場の逆転を意図的にやりだす。

男の言うことを聞かないと、飯にもありつけないし水も飲めないし、野宿になっちゃうから、嫌々、命令に従うようになる。

そして男と女が無人島で二人きり、当然のように男は奥さんを強姦。

最初は強姦の性行為に嫌悪・憎悪だった奥さんは、次第に男に心惹かれてくという、当時の日本のにっかつロマンポルノにもありそうな、男の勝手な願望通りに話は進み(笑)、、、

二人は互いに愛し合うようになった時、船を発見。

ここが秀逸で!奥さんは助けを拒み、この無人島でこの男との生活を望み、男は本当に自分を愛してるなら、普通の生活に戻っても、自分とやり直せる筈だと、火を起こして救助を求めちゃう。

ラストのマリアンジェラ・メラートの心の葛藤の演技は、素晴らしい!

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ここ、見せ場かもね。

奥さんは現実の世界に戻ったら、この男を愛し続ける自信がない。だから救助はいらない。

ここで二人で生涯生活できれば良いと思うのに、男は現実の世界に戻っても、奥さんの愛は不変だと、救助を求めちゃう。

若い頃は感じなかったけど、爺になった今は、この男はバカだと、はっきりわかります(笑)。

基本「流されて…」はコメディなんですが、ラストは流石!イタリアでシリアス!

そして、ラストのマリアンジェラ・メラート、本当にせつなくて美しくて素敵!

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で、この映画の監督&脚本、リナ・ウェルトミューラー って女性なんですねー。

だから、この複雑で微妙な揺れ動く女心、描き方が最高にうまいんでしょうねー。

そしてこれも若い頃は感じませんでしたが、爺になって観てみると、ブルジュワ嫌いの共産党員の労働者の男、粗野で粗暴で頭悪くて、ちょっとうざい(笑)。

監督&脚本のリナ・ウェルトミューラー は、スイスの貴族の血筋らしいけど、ここまで彼を下品に描かなくても良かったんじゃないかしら?(笑)。

で、演じたジャンカルロ・ジャンニーニは、あの!レクター博士の第二弾「ハンニバル」では主任捜査官を演じてたし、「007 カジノ・ロワイヤル」「007 慰めの報酬」にも同じ役名で出てたり、イタリア人俳優なれど、国際的に活躍してる、息の長い俳優。

まぁ〜無人島と言っても「南の楽園」ですからー(笑)、あそこで王様として好きな女と一緒にサバイバル生活してる方が、現実に戻って奥さんと子供たちの為に働いて生きるよりいいと思って、、、

戻ったは良いけれと現実の生活が嫌んなっちゃって、また、マリアンジェラ・メラートと島に戻ろうと画策する、この男の身勝手なれど気持ちも男としてよくわかる。

そしてラストは!、、、


てなわけで、久々に観た! 「流されて…」、やっぱり名作でした。