「マタンゴ」。登場人物全員クソ野郎、特撮の範疇を超えた名作!



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・村井研二(大学助教授):久保明

・相馬明子(村井の教え子で婚約者):八代美紀

・笠井雅文(笠井産業社長):土屋嘉男

・関口麻美(歌手。笠井の愛人):水野久美

・作田直之(笠井産業社員:小泉博

・小山仙造(臨時雇いの漁師):佐原健二

・吉田悦郎(新進推理作家):太刀川寛

(敬称略)

 

1964年の東京オリンピック1年前、1963年に、若大将シリーズ第四弾!「ハワイの若大将」と併映された特撮ホラー映画「マタンゴ」。

私的に「マタンゴ」は、日本の特撮&SFホラーサスペンスの最高峰!この映画で描かれてる人間模様の醜さは、時代を超越してるので、いつの時代でも通じる名作!と思っております。

まぁ〜金持ちの道楽息子や若き著名人と、その取り巻きの女性たちが、ヨット遊びを楽しんでいたら、悪天候無人島に流されちゃって、そこでのサバイバル生活ってな話が「マタンゴ」。

まず最初に、思いもかけずの急な悪天候、そして嵐がやってくるとわかったのに、ヨットを引き返さなかった理由。最初から登場人物たちが、うんこなのが良いですね〜!

そのヨットの持ち主は、道楽者の世襲社長で(土屋嘉男氏)、艇長はそこの会社の社員(小泉博氏)。

もうこの二人の社会的な上下関係だけで、嫌〜な予感がします(笑)。で、艇長の助手が臨時雇いの漁師(佐原健二氏)。



海に詳しい漁師が、悪天候なので引き返す事を進言するも、「道楽息子達は強気だからな」と彼等は引き返さないだろうと言いつつも、艇長は引き返す判断をヨットのオーナーの社長に委ねます。

すると「艇長の君に自信がないんなら、引き返すんだな」。

自信のあるなしではなく、荒れた海は危険だから引き返す事を提言してるのに、ヨットのオーナーの社長にこんな事を言われたら、引き返す事は「自信がないから」と、全員に取られてしまう。

艇長も金はなくてもプライドはあるので困惑してると、更に!全く海の事もヨットの事もわからない推理作家(太刀川寛氏)が、荒れた方が面白いじゃないかと引き返す事を拒否。

艇長は女性もいるからと、なんとか引き返す為の理由を作ろうとしますが、社長の愛人で女性歌手(水野久美さん)は「私は大丈夫よ」と一蹴。

結局、艇長は引き返す言い訳がなくなってしまう(もう一人の女性も、同調圧力で同意)。

で、社長がダメ押しで、このヨットがどれだけ金をかけたかを自慢し、嵐や荒波など何するものぞと講釈たれ、結局、引き返せなくなったこの冒頭の愚かなる人間模様から、「マタンゴ」は私のツボ!

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で、大荒れの海と空の中、各員奮励努力の甲斐もなく、あえなくヨットは遭難漂流。全員意気消沈してると、何と!島を発見。冒頭も素晴らしいですが、「マタンゴ」はここからが本番!

金持ちの道楽世襲社長が「悪いもん」で、労働者階級の艇長や漁師が「良いもん」だと、ありがちなサヨク的な低脳物語になりますが、「マタンゴ」はそうじゃない。

み〜んな糞野郎!(笑)。「良いもん」がいないのが、リアリティを感じ素敵!

労働者階級の漁師もブルジュアの社長も、島で発見した無人の難破船の中に残された唯一のまともな食料、みんなで少しづつ食べようと決めた缶詰を、こっそり盗もうとする。

その難破船を寝床に決めるも、漁師は「人の女」の二人の女性に夜這いかけようとするわ、全員の前で女性歌手と露骨にやりたい宣言するわ、労働者階級のこの漁師もロクなもんじゃない。

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更に、その社長の愛人の女性歌手も、無人島のここでは金があっても役に立たないので、無能な社長が無視し、何故か?推理作家と隠れてセックスしてるらしい(そういう描写はキスシーンのみ)。

でも、この女性歌手、そんなこんなで自分とやりたい漁師と、自分とやってる推理作家が暴力で揉めても、どこ吹く風で「みんな私が欲しいのよ」と、女らしくご満悦の得意顔なのが、また素晴らしい!

しかし、それにしても、自分の愛人の女性歌手と、露骨に「やりたい」宣言を漁師にされても、「やってるくさい」推理作家と女性歌手が、イチャイチャと行動を共にしてても、なーんの反応もない世襲社長。

不甲斐ないを絵に書いて額に入れたようなダメ男なのが、これもまた面白い!

 

 

更に!ここまで最も高潔で、皆の団結と協力を訴え続けた労働者階級の艇長。自力でヨットを直したら、残った缶詰や漁師が隠してた海亀の卵など食料全てと水を持って、ヨットで一人だけ脱出しちゃう。

しかも事前に、社長に二人だけで逃げようと囁かれた時は、激怒して断っておいての、この艇長の単独強行の裏切り。いいですねー、うんこ達によるお粗末で酷い展開!本当にしびれる!

道楽息子も労働者階級も、男も女も一皮むけば皆クソ野郎。「良いもん」なんていやしない。こうじゃないと、この手の映画は面白くない(笑)。

で、、、

漁師役の佐原健二氏。私等世代には「ウルトラQ」の万城目くんでお馴染みの、高潔な青年役しかボクは他に知らないので、ちょいとこの「マタンゴ」での糞野郎役、佐原健二氏ファンには驚く役柄です。

佐原健二さん、こんな糞野郎役、他にないんじゃないのかな?



艇長役の小泉博氏も、私等世代には70年代のテレビの人気クイズ番組「クイズ・グランプリ」の名司会でお馴染み。

 

だから、東宝特撮ファン以外、爺婆でも小泉博氏に役者のイメージ持ってない人多いと思います。

で、この方、鎌倉生まれの慶応ボーイで元NHKのアナウンサーという、華麗なる経歴が風貌に現れてますし、「マタンゴ」では中盤まで「良いもん」だったので、この突然の裏切りは、本当に見ものです。

更に最初から最後までクソ野郎の推理作家、女二人を連れ出し他の男を皆殺しにしようと、普通の男なら誰しも考えそうな事を(笑)実行するも、その場にいなかった漁師が突然現れ予定が狂っちゃう。

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推理作家が漁師を撃ち殺してる間に、社長と大学助教授(久保明氏)に反撃をくらって、見事に失敗。

推理作家と共謀したクラブ歌手、漂流船から所払いになりそうになると、手の平を返し、社長に「女」を発揮し許しを請おうとするも、これも失敗します。

「チッ!」とばかりにまた態度が豹変する女性歌手のこのシーン!最高です。「女」に自信のある女の人は、こうでないと面白くない(笑)。

が、、、

漂流船所払いになったクラブ歌手、ま〜た戻ってきて空きっ腹の社長を「女」と食い物で誘惑し、連れ去ってしまう。

こちらも東宝特撮ファンにはお馴染み!、女性歌手を演じた若き水野久美さん、妖艶な美貌とエロスがなければ、この役は似合わないですから、素晴らしいです!



でも、この道楽息子の世襲社長、終始一貫してダメ男ですねー。

如何に世襲とはいえ、こんな無能の盆暗じゃー、他の役員や管理職、取引先、或いは労働組合に「寝首かかれる」と思うけど、まぁ〜いいと。きっと未だ頼りのパパが、健在という設定なのでしょう。

で、最後の二人になった大学助教授と教え子の婚約者(八代美紀さん)。

大学助教授は逃げた筈のヨットが戻ってきたのを発見するも、艇長、なんと食尽き力尽き、南海に身投げ。ヨットだけが、再び無人島に戻ってきただけだった(潮の流れ?)。

もはやこれまでと、最後の手段で後先考えず、大学助教授は婚約者と戻ってきたヨットで島から脱出しようとするも、婚約者はマタンゴ達にさらわれちゃう。

大学助教授は探しに行くも、マタンゴの群れに囲まれ、半狂乱で婚約者を見捨てて逃げ、一人で無人のヨットに乗る。

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これもいいですねー!ここで婚約者を助けてとなると、安物のハリウッド映画になっちゃって面白くない。

登場人物の中で、婚約者だけはキャラがちょっと弱いですが、他の登場人物が、絶望的に皆!利己的で救いようがないから、いつ見ても!「マタンゴ」は最高!

で、私的には邦画史に残るラストシーンだと思う、最初観た時は「お〜!すげーっ!このラスト!」と感動した、オープニングに繋がる名シーンで「マタンゴ」はジ・エンド。

いやー、いつ見ても!「マタンゴ」は素晴らしい!

なんとか、私が生きてるうちに「マタンゴ」リメイクしてくれないかなー。映画関係者、テレビ関係者、不朽の名作!「マタンゴ」のリメイクを、私は心から願ってます。