
日本では後に「バブル」と命名された時代に大ヒットした「危険な情事」や「ミザリー」と共に、「バブル」崩壊後の1992年、「怖い女」を描いてヒットした映画が「ゆりかごを揺らす手」。
オープニングは非常に呑気で長閑で、とてもサスペンス映画とは思えない流れですが、事の発端は、妊娠中のクレア(アナベラ・シオラ)が産婦人科医で受けた診断。
これが医療行為に見せかけた猥褻行為だったため、その不快さと苦悩でクレアは持病の喘息の発作が再発してしまった。
この描写は産婦人科医が、胸のしこりを確認するふりをして「おっぱいを揉んでおり」、妊婦の視線の入らないところで薄手の手袋を外し、広げた股間に指をねじ込ませる、観ている女性にとってはとても不快なシーン。
このへん、監督のカーティス・ハンソンはうまいですね。まず、女性客のつかみはOK!
更に産婦人科医の診断と猥褻行為は紙一重のため、クレアは自分の勘違いだったのかもしれないと悩み、夫に相談したところ、同じ被害者が出ない為にもと告訴を勧められます。
勇気を持って医師会に訴え出ると、なんとこの産婦人科医は猥褻行為の常習者で、泣き寝入りしていた他の患者もクレアに続いて名乗り出て、マスメディアは大騒ぎになりこの助平医者の起訴が確定。
自業自得とはいえ追い詰められた助平医者は拳銃自殺し、ここから物語が急展開!

自殺なので保険も厳しい、告訴中なので全ての財産は州政府に差し押さえられ、屋敷も出ていくよう勧告され、医師のセレブ妻から、いきなり奈落の底に落ちてしまった夫人は、その場で卒倒してしまい救急車に運ばれますが、身籠っていた子を流産してしまう。
観ている者は男女ともに、 レベッカ・デモーネイ演じる夫人が可哀想で同情するでしょう(演技力が光ります!)、もうワンカットが騒動の発端のクレア家族の仲睦まじき家庭の対比ショット。
二度目のつかみもOKの、これは監督の妙技でしょう。
そしてセレブ妻からは陥落するし、流産の結果、子供も産めない身体になってしまった夫人は、その原因になった夫婦の産まれてきた赤ちゃんのベビーシッターになり、ここから逆恨みの復讐劇が始まります。
まあ〜、レベッカ・デモーネイの名演技によっての事なのですが、とにかくこの女性のキャラクターは強烈で!「ゆりかごを揺らす手」は本当に傑作です!
この作品の亜流、模倣のエロチック・サスペンス・ミステリー、沢山この後(B級含め)作られていますが、これ以上はネタバレになるのでストーリーはこのへんまでですが私的には大の!お薦め映画。
私的にサスペンス・ミステリー映画で10本選べと言われたら、レベッカ・デモーネイが素晴らしいので、確実に「ゆりかごを揺らす手」は入れる映画です。

一方、主演のレベッカ・デモーネイとアナベラ・シオラはこの後、あまり商業的に成功した作品に恵まれたとは言いがたいので、若い映画ファンには、あまり知られてない気がします(年配でもかな?)。
だから、やはりレベッカ・デモーネイは、元恋人のトム・クルーズとの競演で、トム・クルーズに限らず彼女も有名になった1983年の「恋愛白書」と「ゆりかごを揺らす手」が代表作と言えるかしらね?
