「移民の歌」に、ギターソロを入れなかったジミー・ペイジの潔さ!





日本でもリアルタイム、シングルヒットしたレッド・ツエッペリンの「移民の歌」。この曲はアルバム収録もシングル盤も、共にギターソロがない2分台の短いナンバー。

で、こちらがシングルヒットした1970年と言えば、ジミ・ヘンドリックスが突然!他界したとはいえ、当時はロックギターヒーロー突入の時代です。

エリック・クラプトンか? ジェフ・ベックか?リッチー・ブラックモアか?はたまたテンイヤーズ・アフターのアルヴィン・リーかってな感じで、誰がロックシーン最高のリードギタリストなのか?

 

ハードロック版の「勝ち抜きエレキ合戦」みたいな空気、日本に限らず欧米にもあったと思います。

 

勿論、レッド・ツエッペリンのジミー・ペイジも、そのハードロック版「勝ち抜きエレキ合戦」にノミネートされていた一人でした。

 

 



だから、シングル「移民の歌」でのリードギターソロのないジミー・ペイジの、ある種の商売人としての「潔さ」「覚悟」は、並大抵のソレではなかったと今更ながら思います。

まぁ〜レッド・ツエッペリンは、シングルよりもアルバム志向だったとはいえ、アルバム収録曲でもコンパクトでキャッチーなジミー・ペイジのギターソロは、どれも魅力的でした。

でも「移民の歌」には、リードギターソロが入ってない!

 

私は、かつて巷に溢れたジミー・ペイジ下手説が、若い頃から大嫌いでした。ギターの上手い下手の基準が、今も昔も曖昧でよくわからないからです。
 
凄く上手いみたいだけど、あまり面白くない音楽やってる人と、あんまり上手くないみたいだけど、なんか面白い音楽やってる人なら、私は後者に飛びつくタイプなので。

で、ジミー・ペイジは「水もの」のポップスター、ロックスター(日本で言えば芸能人?)に全く興味がなく、若い頃は手堅い仕事のスタジオミュージシャンをやっていました。
 
エリック・クラプトンヤードバーズを抜ける時(解雇?)、後任候補はジミー・ペイジでしたが、ジミー・ペイジは無名のジェフ・ベックを推し、自分は頑なに加入しなかった。

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でも、後にエリック・クラプトンがクリームで、ザ・ビートルズザ・ローリング・ストーンズ並みの大成功を収め、ヤードバーズも人気バンドになると、ジミー・ペイジは気持ちが変わってます。
 
スタジオ仕事を辞めヤードバーズに加入し、ジェフ・ベックとツインリードギターを奏で、ロックシーンに燦然と登場してきてます(最初はベーシストの代わりだったが)。
 
ジミー・ペイジは今の欧米のブリティッシュロックムーブメントは、ザ・ビートルズだけの一過性の騒ぎではない。これなら自分もいけると確信を持ってヤードバーズに加入したのでしょう。
 
そしてその後、レッド・ツエッペリンを結成する時のメンバーに言った言葉「どうだい?金儲けをしてみないか?」は有名な話です。
 
ジミー・ペイジは良い意味で商売人。自分なら、他の出ては消えのバンドと違い、ザ・ビートルズ並みの成功を収められる自信があったのでしょう。
 
また、レッド・ツエッペリンのロバート・プラントジョン・ボーナムは加入当時は無名ですから、既に音楽業界で活躍していたジミー・ペイジジョン・ポール・ジョーンズは別格。
 
そしてジミー・ペイジの音楽を金にする方法論に、同じく音楽業界の裏方仕事をやっていたジョン・ポール・ジョーンズも賛同したのでしょう。
 
 
ロバート・プラントジョン・ボーナムも最初は半信半疑でも、やってみたらいきなりアルバムは売れるはアメリカでは大喝采で迎えれられるはで、本当に巨万の金が入ってきた。
 
イギリスでは当初、うるさ型の音楽評論家とかには不評だったようですが、そんな商業的大成功に、ありがちな内紛などレッド・ツエッペリンに起こるわけもない。
 
この辺もプロデューサー、ジミー・ペイジの凄いところです。
 
また、ジミー・ペイジ下手説と共に、ジミー・ペイジけち説も昔からありました。
 
スタジオ・ミュージシャンとして、裏方で音楽業界に接していたジミー・ペイジは、ろくでもない口の上手い悪徳マネージャー、悪徳プロデューサーをみてきた事でしょう。
 
その警戒心もあり、金にシビアだったのでしょう。これもキャリアです。
 
という具合にジミー・ペイジが当時、やいのやいのマスメディアに叩かれたのは、そういうビジネスマンとしての頑なさもあってでしょうが、きっと人間的にも「嫌な奴」なんでしょう(笑)。
 
エリック・クラプトンジェフ・ベックリッチー・ブラックモアもロバート・フィリップも、皆さんイギリス人的な(笑)きっと嫌な奴、変な奴なんだと思います。
 
 
というわけで、若きジミー・ペイジはギタリストであり音楽家であり、そして音楽業界のビジネスマンだったわけで、ジミー・ペイジがいなかったらレッド・ツエッペリンの成功はなかったでしょう。
 
だから、絶対!ヒットしそうな楽曲に「有名ギタリスト」なのに自分のギターソロを収録しない。その方が「移民の歌」は仕上がりが良い。商品として売れると確信を持った凄み。
 
そして実際に売れちゃうんですから、これは凄いセンス、才能だと思います。

とにかく、ギタリストのジミー・ペイジを、客観的にある種冷徹にレッド・ツエッペリンのバンドマスター・プロデューサーのジミー・ペイジは見ていたわけです。

このへん『作詞家:矢沢永吉』を評価せず、「矢沢の曲には矢沢ではなく他の人の作詞の方が良い」と、プロデューサー『矢沢永吉』が思える凄みとジミー・ペイジは似てます。


でもライブでは、やっぱり「移民の歌」でギターソロを、ギタリストとしてジミー・ペイジはがんがんに弾いてます(笑)。

 

ジミー・ペイジも、ライブでは他のギタリスト同様とてもソロは長い。更にジミー・ペイジはライブでは完全にショーマンに徹してるのは、ファンなら釈迦に説法。

 

この辺のショーとしてのライブパフォーマンスとレコーディングを、きっちり分けて考え活動していたジミー・ペイジは、やはりあの時代を代表するミュージシャンだったと、爺になった今も思いまする。