1963年8月の東宝夏休みロードショー、若大将シリーズ第四弾「ハワイの若大将」は、東宝特撮ものでも屈指の名作！「マタンゴ」と併映。
若大将シリーズの併映はこの後、「海の若大将」で「フランケンシュタイン対地底怪獣」と、おどろおどろしい特撮ものが続きます。
思えば、明るく楽しい「若大将」シリーズは大人のファンタジーの陽そのものに対し、「マタンゴ」と「フランケンシュタイン対地底怪獣」は特撮ものでも指折りの陰な物語。
当時の東宝のお偉方の、この陽陰の二本立て上映の発想は、色々と思うところがあります。特に「ハワイの若大将」と「マタンゴ」は共に海、ヨットの物語なのが、なかなか凄い組み合わせです。
で、次の「エレキの若大将」の併映も「怪獣大戦争」で、この3作が若大将シリーズと特撮もの併映のリアルです（その後、名画座での諸々の組み合わせはあったと思いますが）。
思えば「エレキの若大将」「怪獣大戦争」正月上映時の1966年1月に、かの！テレビ特撮ものの金字塔！「ウルトラQ」が放映開始しております。
というわけで「ハワイの若大将」は、東京オリンピック開催の1年前に上映されているので、台詞に東京オリンピックネタが入ってるのが時代。
若大将のお婆ちゃん（飯田蝶子さん）が、外国人客が麻布の老舗すき焼き屋「田能久」に来るからと英語を習い、父親はホテルができるとホテルに入ってる高級飲食店に客をとられると苦悩してます。
また、タイトル通り「ハワイの若大将」はシリーズ4作目にして初の海外ロケのハワイ。ワイキキビーチ、ホノルル国際空港などハワイ撮影が、とても贅沢な印象を受ける映画です。
おそらく有名人、芸能人がハワイでサーフィンをやってる映像は、こちらの「ハワイの若大将」の加山雄三氏が初でしょう（ただ、真っ直ぐ乗ってるだけですが）。
で、「ハワイの若大将」が特出すべきは、 作曲家「弾 厚作」がこの映画から登場しているところです。
「ハワイの若大将」も次作の「海の若大将」も、初期の若大将シリーズの主題歌は、若大将シリーズの音楽担当だった広瀬健次郎氏や、ジャズマンの中村八大氏が作曲した曲を加山雄三氏が歌ってます。
が、私的には、どうにもこれら楽曲がカッコ悪くて、いつ聴いても好きになれない。
一方、「ハワイの若大将」で遂に！加山雄三氏作曲＝作曲家「弾 厚作」作品初登場の、「DEDICATED」のこのセンス！
加山雄三氏と言えば俳優であり歌手、作曲家、そしてギタリスト、ピアニストとしても有名ですが、シンガーソングライターとしてのレコードデビューは案外遅く1965年6月で、28歳になってからでした。
曲は「ハワイの若大将」で歌った、自作英語詞の「DEDICATED」を日本語詞にのせた（作詞：岩谷時子さん）「恋は赤いバラ」が初で、この曲が作曲家「弾 厚作」のプロレコードデビュー第一作。
それまでは俳優仲間とバンドを組み、学生時代からの延長で「お遊び」で音楽を楽しんでいたようなので、「ハワイの若大将」で「DEDICATED」を披露してから、レコードになるまで約2年弱かかってます。
「海の若大将」を経て、1966年の正月映画になった「エレキの若大将」ですが、実際の加山雄三氏も自らのザ・ランチャーズや寺内タケシとブルージーンズと演奏し、ヒット曲を連発するようになりました。
時はザ・ヴェンチャーズの♪テケテケブームの真っ盛りで、1966年にはザ・ビートルズの来日も控え、そのあとは空前のグループサウンズブームが巻き起こる、「エレキの若大将」はそんな時代の映画。
で、「ハワイの若大将」はパパの有島一郎氏、お婆ちゃんの飯田蝶子さん、妹の照子役の中真千子さんのレギュラーは同じですが、京南大学の部活のマネージャー役が、いつもの江原達治氏でなく二瓶正也氏。
江原達治氏がカナズチだったので、ヨットシーンや海に放りされるシーンがあるので辞退して、「ハワイの若大将」だけ、マネージャー役が二瓶正也氏になったそう。
また、二瓶正也氏は「エレキの若大将」にも、蕎麦屋の出前持ち役の寺内タケシ氏や、京南大学アメラグ部メンバーで作った『石山進次郎とヤングビーツ』のドラマーとして出演しています。
実際に二瓶正也氏は、加山雄三氏が俳優仲間を集めて作った初代ザ・ランチャーズのドラマーだったそうで、「エレキの若大将」の後、テレビ「ウルトラマン」のイデ隊員役で彼は一躍有名になりました。
で、そのイデ隊員役も元々は石川進氏だったそうですが、諸々あって撮影開始後に降板。急遽！二瓶正也氏に決まったようなので、こちらも代役で有名になったのですから、人生はわからないものです。
というわけでシリーズ初の海外ロケ、日本人俳優初のサーフィンシーン、シンガーソングライター加山雄三氏初お披露目と「ハワイの若大将」は、見どころ満載の私的にはシリーズ中でも大好きな映画です！
