映画「ゴッドファーザー」のモー・グリーン、ハイマン・ロスのモデルはシチリアではなくユダヤ系マフィアでした

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ゴッドファーザー」の1作目の終盤の見せ場である、新たなドンになったマイケル・コルレオーネ(アル・パチーノ)の粛清の名場面。

マッサージを受けてるところを襲撃され、目玉を撃ち抜かれるモー・グリーン(アレックス・ロッコ)のモデルは、ギャングスターで有名なベンジャミン・シーゲル。あだ名はバグジー

シーゲルはアメリカのニューヨーク生まれですが、親が東欧のウクライナ出身のユダヤ系移民で、ストリートギャングになった10代の頃に、一家でアメリカに渡った同じくユダヤ系ロシア人のマイヤー・ランスキーと出会っています。

このランスキーが「ゴッドファーザーPARTⅡ」でマイケルの宿敵になる、ハイマン・ロスのモデルなので、このシーゲルとランスキーの関係を知ると、「ゴッドファーザー」と「ゴッドファーザーPARTⅡ」は、より!面白く観れる映画です。

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ランスキーはシーゲルより4歳年上で、二人は兄貴分と弟分という関係で自動車泥棒をしては闇ルートでそれを売り捌いたり、ギャングに貸していたそう。

時はアル・カポネが幅を利かせていた禁酒法の時代で、若い二人はこうしてギャングとの交流ができ、密造酒を運ぶトラックの護衛や、別のギャングのトラックを襲って密造酒を奪い闇ルートで売って金を稼ぎ、ギャングの世界で名を馳せていきます。

ゴッドファーザーPARTⅡ」でハイマン・ロスが、モー・グリーンとの想い出をマイケル・コルレオーネに話すシーンがありますが、あのシーンも、モデルのシーゲルとランスキーの二十歳前からの腐れ縁を知って観ると、なかなか深いものがあります。

映画「ゴッドファーザー」・「ゴッドファーザーPARTⅡ」は、親が地元のギャングに殺害され、自らも殺されそうになったヴィト・コルレオーネ少年が、周りの協力もあり命からがらイタリアのシチリアからアメリカに逃げ、そしてギャングになったお話。

老いたヴィトをマーロン・ブランド、若きヴィトをロバート・デ・ニーロが好演してます。

でも、モー・グリーンもハイマン・ロスもイタリア系シチリアとは縁もゆかりもない、アメリカで闇社会の「ビジネス」で、イタリア系シチリアギャングと関係を持ったユダヤ系ギャング。

このへんが、なかなかこの物語、アメリカ人、或いはマフィアと一括りにしてはいけない、奥の深さを感じますねー。

まぁ〜、大東亜戦争敗北までは日本だった在日の南北朝鮮半島と台湾出身の在日、或いはかつて日本の保護領だった満州から列島に渡ってきて、そのまま戦後も日本に居着いた満州人の派閥って、日本でもあります。

イタリア系シチリアマフィアとユダヤ系マフィアは、日本だとそんな感じなのかしらね〜?

ちなみにマイケル(アル・パチーノ)の恋人で元奥さん役のケイ(ダイアン・キートン)は、WASP=イギリス系上流家庭出身。

日本で言えば中高一貫で大学まであるお金持ち御用達の学校に通う、財閥系家庭のお嬢ちゃんが同級生の金持ちで頭の良い男の子と恋仲になったら、その男の子の家業は表は合法企業でも、裏は在日の暴力団だったと思って観ると、「ゴッドファーザー」は更に!面白く観れます!

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で、、、

アル・カポネが収監され闇社会のパワーバランスが崩れるのが1931年で、禁酒法が終わるのが1933年。

密造酒や売春、株のインサイダー取引等でボロ儲けしたのはギャングだけではなく、後にアメリカ大統領になるジョン・F・ケネディのパパ、アイルランド移民のジョセフ・P・ケネディもその一人。

ひと財産築いたジョセフ・P・ケネディは、金にものを言わせ政界進出を目指し、日米戦時の大統領、フランクリン・ルーズベルトに近ずいています。

映画「ゴッドファーザー」で、ヴィト・コルレオーネが政界にも顔が利く設定になっていますが、元々は密造酒や売春、株のインサイダー取引で儲けた、ギャングも政治家も仲間ですから、その頃からの「お付き合い」と思えば当然と言えば当然。

だから!ヴィト・コルレオーネは麻薬に手を出すと、親しい政治家達も流石に逃げていく。

麻薬は儲かるかも知れないが、政治家が逃げていくと長い目で見るとビジネスがやりずらくなるという理由で、強固に麻薬には反対したため、ヒットマンに狙撃され、これにて大抗争の幕開けになったわけです。

まぁ〜コルレオーネファミリーのマイケルの兄フレド(ジョン・カザール)が、この抗争中に西海岸に拠点を移し羽振りの良かったモー・グリーンの預かりになっています。

モー・グリーンの実際のモデル、ベンジャミン・シーゲルは1937年に西海岸に拠点を移し、何もない地にカジノやホテルを建設、不動産含め大成功していたやり手のギャング。

映画ではユダヤ系ギャングのモー・グリーンは、イタリアはシチリア出身のギャングのヴィト・コルレオーネと若い頃に一緒に仕事をしていた仲なので、その義理でヴィトの子供のフレドが預けられています。

そして、新しいコルレオーネファミリーの親分になったマイケルの粛清計画の一貫で、モー・グリーンは殺害されますが、モデルのシーゲルも1947年にカリフォルニアのビバリーヒルズの愛人宅で襲撃を受け、惨殺されています。

そして映画と同じで、この事件は迷宮入りで犯人はわかっていません。

で、本物のベンジャミン・シーゲル、なかなかの色男です↓。

だから、あれだけの大規模な粛清をマイケル・コルレオーネがやっても逮捕されない、当時のアメリカの闇社会と政治家との強い繋がりというのは、本当だったと思ってよいでしょうね。

1960年に、ギャング=マフィアと深い関係にあったジョセフ・P・ケネディの子供のジョン・F・ケネディが大統領になれたのは、不正選挙がマフィアの力であったからと今や定説になってますが、この時、まだ迷宮入りしたシーゲル惨殺から13年のアメリカですから、さもあらんです。

一方、シーゲルの兄貴分で映画「ゴッドファーザーPARTⅡ」のハイマン・ロスのモデル、マイヤー・ランスキーが西海岸やフロリダ、ニューオリンズ等だけでなく、キューバに目をつけたのが1938年で、実際にこの当時、ランスキーもまた政治家と深い繋がりを持っていました。

映画「ゴッドファーザーPARTⅡ」にも描かれていた、1959年の正月に成功したキューバ革命により、キューバの政治家とアメリカの政治家の橋渡しをし、闇できっちり財をなしていたランスキーの我が世の春はこうして終わったわけですが、ものすごい政治力を金の力で持っていたのは、間違いありません。

映画「ゴッドファーザーPARTⅡ」で、その後のハイマン・ロスはマイケルの命によるヒットマンに殺されますが、モデルの実際のマイヤー・ランスキー↓は1983年、80歳まで長生きしてます。

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